20代では東アジア・東南アジアを中心としてアジア東部の旅をしてきたが, 30代からドバイを拠点に南アジアや中近東などの旅も始めたのでアジア西部の記事をも今後どんどん綴っていく予定だ。
今回はその第一弾。
ディズニー映画アラジン実写版の公開を記念してアラビアンナイトの世界を紹介。
場所はUAEの首都アブダビきっての観光名所であるシェイクザイードグランドモスクである。
ここはアブダビ空港のすぐ近くにある。アブダビへはドバイからバスターミナルのあるアルグバイバ駅やイブンバットゥータ駅からバスで2時間程で来れる。
終着のアブダビバスターミナルからはタクシーや市バスに乗ってモスクまでやってくることができる。
(ドバイからタクシーだとかなりの料金になるがドバイ・アブダビを結ぶバスは山手線クラスの頻度で発着するのでとても便利。
料金も2時間乗車して750円程度(2020年頃)と良心的だ。利用する方にはこちらの記事を参照されたし。
車で来る場合には地下駐車場に止めることとなる。なおモスク周囲には沢山のゲートがあるが, 空いているのは一部なので一周ぐるりと回って入れるところを見つけなければならない。


モスクと言いながらも地下はショッピングモールのようになっている近代的空間。
イスラム教モスクとして世界的に有名であるものの, トルコやサウジアラビアといった国の有名モスクとは異なり古くからあったわけではなく比較的近年に建てられたものだ。
それだけに宗教建築の優雅さと近代的な洗練されたデザインが融合された施設であるかと思う。


エスカレーターを使って地上へ出ると夢のような美しさのモスク。
ここへ訪れるのは断然夜がお薦め。
そもそも昼間は暑くてゆっくり見るのは相当しんどいし, 比較的涼しくてライトアップもされている夜がベストな訪問時間だろう。
時間も夜10時頃まで開いているから閉館時間を気にする必要はない。
(ただしイスラム教にとって大切な金曜日は変則的なので注意)
もしくは暑さに丈夫な人や冬季間であれば日没前の白と青空のコントラストや夕暮れ時の眺めを楽しむのも良いだろう。
一緒に地上へ出てきた人達がたまたま同じ日本人であった。
そのまま地上を歩いて向かっていき門の前まで来た。
ただ入り口を見つけられないでいたところ係員に観光客は地下からのルートで入らなければならないという事であった。
どうやら地上から入っていけるのはムスリムの人達のみで, さっきの地下空間がモスクまで繋がっていたようだ。


さっきの場所まで戻り地下通路を進んでチケットを入手。
チケットといっても入場は無料である。
更に無料で服装まで貸して貰える。
短パンやスカートはNGで女性はスカーフもしなければならないが, 無料で借りられるから心配は不要である。


動く歩道のエスカレーターで奥へと移動していく。
モスクの地下にこんな施設があるのは宗教的価値観を基本としながらも近代的な便利さを兼ね備えるUAEならではかもしれない。


長い通路を抜けて地上へ出てみると, そこにはモスクが目の前に。
間近で見るとより幻想的な空間だ。
まさしくアラビアンナイトの世界観である。
さて下の写真はどこでしょう?


正解はトイレ。
あまりに豪華でそうとは思えなかったかもしれないが, 最初の写真は足を洗う用の蛇口。
イスラム圏ではお祈り前に足を洗うのでトイレに併設されている事が多い。


ところでモスクの名前にもなっているシェイク・ザイードというのはUAE建国の英雄の名前だ。
元々UAEはイギリスの植民地ではないが保護領のような扱いとなっていて, 1970年代に建国されたばかりの新しい国である。
砂漠のベドウィン文化の国でもあったから各地の部族でバラバラだったところをアブダビの首長であったシェイクザイードがドバイをはじめとする各首長や砂漠の部族達を説得してまとめあげたのがこの国の成り立ち。
砂漠のオアシス地域での農業振興や石油生産から得た現金収入を国内インフラ投資に振り向けた事で国の発展の礎を築いた人物でありこの国ではとても尊敬されている初代UAE大統領である。



ところでアラビアンナイトと言えば最近ディズニーが公開した実写版アラジン。
ウィル・スミスがランプの魔人ジーニーを演じた事でも話題となった。
映画アラジンがどこを舞台とするかは諸説ある。
アラビアンナイトという名称からはアラブ地域でありそうなものだが, おおもとの古典である千夜一夜物語はペルシャの物語だし, ランプの魔人の物語の舞台は実は中国である。
ただ, ディズニー脚本の映画アラジンでは明らかに中国の街中とは異なるオリエンタルな雰囲気。
王様がスルタン(日本語訳ではサルタンとなっているが)と呼ばれるのもイスラム世界の特徴である。
といっても映画冒頭の市場にいる人達の服装など見ると頭はスカーフで隠しているものの中東の人達が身に着けるものよりよほどカラフルでインドのビビッドな色合いの世界観である。
街の名前がアグラバーであることから, やはりタージマハルもあるアーグラがモデルなのだろうか。
アニメ版の冒頭に出てくるターバンをかぶった商人もインドにおけるシーク教徒の特徴である。
インドではシーク教徒は商人として活躍するものが多いことでも有名だ。
ただ不思議なのはこの人がいきなり冒頭でアラビア語でこんにちは(サラーム)と挨拶するところだ。インド・イスラム文化圏全域が舞台となっているのかもしれない。
確かに有名なドュエット曲であるアホールニューワールドでも空飛ぶ絨毯に乗ってエジプトやギリシャのような場所を飛行する描写がありイスラム世界の影響を受けた様々な地域を取り入れたものなのかもしれない。
(ギリシャはオスマン帝国やイスラム帝国の一部でもあった)
また今年公開された実写版アラジンではアグラバーが港町になっているなどインドのアーグラとは異なる特徴もみられた。
帆船が出てきたが, これはよくみると帆が三角形。
ラテンセイル型と呼ばれるアラブ世界で使われてきたダウ船の特徴だ。
中東やアラブというと何かと砂漠とラクダのイメージで語られるが, 実際には湾岸地帯では天然真珠の採取が主要産業であった非常に海と関連の深い民族である。
ダウ船は海のラクダとも呼ばれ, 季節風に乗ってインド洋を東西に, 西は東アフリカから東はマラッカ海峡付近までアラブ商人が航海していた。
実際タンザニアのザンジバルはオマーンが統治していたし, インドネシアのアチェには中東系の人が古くから住んでいるのだ。
自分が実際にアチェを旅した際にも現地で目の青い人に遭遇したのである。
インドネシアでもアチェは宗教色の強く, また美人の産地として知られている。
また実写版に出てきた冒頭のランタンはラプンツェルのオマージュなのだろうか, ランタン祭りなら台湾やタイのチェンマイが有名でアラビアンなイメージは特にない。
ベンガル湾に面するミャンマーやイスラム教徒が多数のバングラデシュにも似たような祭りがあるようだが, これも仏教のお祭りなのでアラジンに出てくるのは少し違和感があった。
ただランタン自体は中東でも身近なものであり, 特に断食(ラマダン)明けのお祝いのシンボルとなっているのでこの期間はUAEの街中至るところで見かけられるし, 観光客向けの土産物屋にも沢山並んでいる。
それから実写版のア・ホール・ニュー・ワールドでもアグラバーを飛び出して様々な場所の上空を飛行しているがアニメのようにはっきりとエジプトやギリシャと分かる場所はでてこなかった。
途中の動物達が出てくる夜景はライオンキングを彷彿とさせるものだ。
ライオンキングはスワヒリ語が出てくる事から東アフリカが舞台と思われるが, もしかしたらこれも東アフリカにまでイスラムアラブ文化圏が歴史的に強く影響を及ぼしたことを意味するのかもしれない。
先述したようにタンザニアのザンジバルをはじめアラビア半島沿岸部からスワヒリ海岸までアラブ圏の影響下にかつてあった。
また後半で棚田のような場所が出てきているが, 人工的なものには見えないので自然にできたものと考えると, これはトルコにあるパムッカレをイメージしたのではないかと思う。ここには温泉の出る石灰岩段丘が有名なのだ。
結局のところ舞台とする国は一つではなく, かつてインド洋全域に影響を及ぼした中東イスラム・アラブ文化圏を広くイメージして作られたのかもしれない。



豪華なシャンデリアはスワロフスキー製だ。
ここには世界最大のペルシャ絨毯が敷かれている。
アラブ圏はイランのペルシャ文化圏とは歴史的に対立してきたが, UAEやカタール・バーレーンなど中東湾岸地帯では経済交流は活発に行われてきた側面もある。
そのためペルシャ絨毯はやはり高級なものとして認識されている。





ちゃっかりとお土産屋が設けられているあたり商売上手なUAEらしさであった。
UAE旅行お土産のお薦めについてはこちらの記事も参照。