2019年夏。ある旅を思い付く。それがヒマラヤ山脈南麓地域であるブータン・インド北部・ネパールの陸路旅だ。

航空機代や時間の制約によりこれまでどうしても東南アジアの多かった自分にとっては本格的にそれ以外の地域に進出した旅となった。そして最初に訪れるのが旅人に人気のインドでもネパールでもなく, ブータンである。
ブータンは国の規定によりバックパッカーのような格安旅行ができないため, ある程度の予算が必要だが, 幸せの国として2011年東日本大震災後に訪れた国王の国会での演説が日本人にとって印象的だった興味深い国である。
そんな神秘の国へと旅立つ。ただブータンへは航空路線が限られていてバンコク・シンガポール・インドからの飛行機となるが日本からだと位置関係から遠回りを避ければバンコクから入るのが一般的。
バンコクを経由してスワンナプームにて搭乗する。チェックインの際には僧衣を纏った僧侶が列に並んでいたのが既にブータンらしい。しかも一般人とは別扱いでタイと同様に僧侶の社会的地位は高いようだ。


飛行機の出発は早朝で, 乗客は皆ぼーっとしながら待つ。
搭乗が始まっても並ばずに, 係員に呼びかけられてやっと皆動き始めていてとてもマイペースだ。
航空会社はロイヤルブータン航空。別名龍を意味するドゥルックエアーともいう。
普段はあまりない一番前の席を指定もしていないのに割り当てられて、しかも隣にはスーツ姿の日本人女性が乗ってきた。こんな日本から訪れにくい辺境の国で珍しい事もあるのだなとその時は思ったが、この理由は到着時に判明する。



飛行機はブータンへ直接向かうのではなく, 一旦インドのバッグドグラ空港で着陸して更に客を乗せてから再出発。 バッグドグラは空港の敷地で働いている人が自転車をこいでいてのんびりした雰囲気だった。
そしてブータンへ向かった飛行機はこれまで乗ってきた飛行機路線のどこよりもダイナミック。圧巻はブータンのパロ空港への着陸である。
雲に突き刺さるように聳える山々の間を縫うようにして曲がりながら飛行するのだ。空を飛行するというより谷間を飛行しているという感覚である。客席に座ってみていると, 飛行機の翼が山肌にぶつかってしまいそうで心配な感覚に襲われるのだが, 見られる景色は絶景そのもの。


上空からは煌々と灯りに照らされる大都会は見当たらない。冒険心がくすぐられるような見渡す限りの大秘境である。



ブータンのパロ空港へと到着。空港の建物は思いっきりブータンらしさ全快の建物だ。


しかし, 駐機場で停止しても乗降が全く始まる気配がない。
不思議に思っていると, 自分の座る機内右側とは逆サイドの人達がざわざわ騒ぎ出す。どうしたのだろうか?と自分も左側によって窓から見るとそこには飛行機のタラップ, そしてその先へと延びるレッドカーペットが。


更にしばらく待つと出てきたのはまさかの秋篠宮ファミリー。そういえば来る直前にも日本のニュースで夏休みにブータンを訪問されるという報道をみていたがまさか同じ飛行機になるとは思わなかった。
でも思い返すと座っていた機内前方で周りにやたらとスーツ着用の日本人が多かった。ブータンには日本大使館もなく経済交流も活発とはいえない。訪れる日本人のほとんどが観光客のはずなのに何故スーツ姿?と思っていた。
しかも隣に座った女性は何か段取りを確認するかのごとく前方のビジネスクラスの人と頻繁にやりとりをしている。便の時間が朝早かったので深く考えず早々に寝てしまったが今考えるとあれは宮内庁の人達だったのだと気付く。



傍にいたヨーロッパ人があの人達は誰だろうというので日本のロイヤルファミリー, エンペラーの義妹とプリンスだと伝えると周りの人達がWOW!と驚いていた。
パロ空港には谷間を縫うように飛行しながら時間をかけてゆっくりと降下していったが, やはりリスクがあるようで今回の訪問でも秋篠宮文仁親王は別便で訪問して現地合流する形となっていた。
さてセレモニーも終わりレッドカーペットが片付けられると, 一般客も降りていく。タラップの階段を下って徒歩で空港の建物へと向かう。


建物入り口にはブータン国王家族の写真。
建物内部にもブータンらしさがよく出ていて面白い。空港の建物というと近代的な建物というイメージだが, こういったお国柄を前面に出す建物の方がツーリストには喜ばれるだろう。

さて空港を出ると待ち合わせていた旅行会社のスタッフと合流。先ほど日本からVIPが来ていたことも知っていた。
空港近くに行きたかった場所があるのでまずはそこへ行ってくれないかと伝えると今日はこれからインドのモディ首相も来る予定でこれから首都と空港を結ぶ道路が封鎖されるとの事。
なので先ずは道路封鎖前に首都ティンプーへと向かうとする。一日に何人ものVIPを迎えるすごいタイミングと重なったがこの旅は幸運に恵まれているのだろうか。
続く